一人の冒険から、チャットルームでの共闘へ:AI + YouTubeライブRPG『UbiQuest』開発の振り返り

26-06-01

執筆:Bull Hsu/ユビタス 事業開発・マーケティング統括責任者

従来のRPGでは、プレイヤーは一人で選択し、一人で物語を進め、一人で戦闘結果を受け止めることが一般的でした。では、「プレイヤー」という概念を分解し、YouTubeのチャットルームにいる視聴者が一緒に投票し、一緒に仲間を集め、一緒に戦い、さらにAIキャラクターが視聴者のコメントにリアルタイムで反応できるようにしたら、RPGはどのように変わるのでしょうか。

ユビタスが試験的に開発した『UbiQuest』は、AI、YouTubeライブでのインタラクション、そしてクラシックなRPG構造を組み合わせた実験的なゲームです。これは単にRPGをライブ配信で流すものではありません。チャットルームそのものをゲームのコントローラーにし、視聴者を傍観者から仲間へと変える仕組みです。冒険の途中で、ユビちゃんはライブ配信の現場で起きていることを見て、聞いて、記憶し、さらに仲間たちと楽しく会話することもできます。

開発を通じて最も大きな気づきとなったのは、AIライブゲームの難しさは「コンテンツ生成」だけにあるのではなく、リアルタイム生成、複数人による投票、RPGのルール、そしてライブ配信のテンポを同時に成立させる点にある、ということでした。

以下では、今回の開発で特に印象に残った4つのポイントを紹介します。

ポイント1:YouTubeチャットルームをRPGのコマンド画面にする

『UbiQuest』の中核となるインタラクションは、視聴者がYouTubeのチャットルームを通じて投票し、次の行動を決める仕組みです。ゲームは各ラウンドで現在の状態に応じて、探索、戦闘、休憩、仲間の募集、逃走、スキル使用などの選択肢を生成します。視聴者が数字を入力すると、システムが結果を集計し、物語を進行させます。

一見シンプルに見える仕組みですが、実際にはライブ配信のテンポ設計が大きく関わります。投票時間が短すぎると、視聴者が反応する前に終わってしまいます。一方で長すぎると、RPGのテンポが間延びしてしまいます。また、選択肢が多すぎると、視聴者が考える時間が長くなり、ゲーム進行が複雑になりすぎてテンポも落ちてしまいます。

そのため、投票項目、カウントダウン、無投票時や同票時の処理、ランダム決定などのフローを調整できる仕組みにし、「遊べる」ことと「見て楽しめる」ことのバランスを取れるようにしました。

ライブゲームは、単にボタン操作をコメントに置き換えるものではありません。「待つ」という体験そのものを再設計する必要があります。視聴者には参加する時間が必要であり、AI配信者には反応する時間が必要です。同時に、ゲームとしての進行感も維持しなければなりません。そのためには、何度もテストを重ね、各要素の間でよりよい調和を見つけることが重要でした。

ポイント2:視聴者を単なる投票者ではなく、冒険の仲間にする

従来のライブ配信におけるインタラクションは、コメント、投票、スーパーチャットや演出効果にとどまることが多くあります。しかし、RPGの魅力は「パーティー感」にあります。『UbiQuest』では仲間募集システムを導入し、チャットルームの視聴者がユビちゃんの仲間となって、一緒に冒険に参加できるようにしました。

パーティーには、騎士、魔法使い、ヒーラーが登場し、ミッションの進行に応じて、エルフメイジなどの隠し職業も解放されます。それぞれの役割も異なります。騎士はダメージを受け止め、魔法使いはハイリスクな攻撃を担当し、ヒーラーはパーティーの継戦能力を支えます。バージョン更新に合わせて、スキル、MP回復、カウンター、弱点攻撃、Bossギミックなども段階的に調整していきました。

これにより、視聴者は単に「主人公の進む道を選ぶ」だけではなく、パーティー編成、リソース消費、キャラクターの生存、戦闘結果にも関心を持つようになります。

自分の名前がパーティー内に表示されると、参加感は一気に高まります。隊長であるユビちゃんは、視聴者の仲間たちに指示を出し、それぞれの役割を確認するようになります。RPGの数値システムは単なるゲームルールではなく、コミュニティのつながりを強める装置にもなりました。

ポイント3:AIキャラクターはリアルタイムに話すだけでなく、今何が起きているかを理解する必要がある

『UbiQuest』に登場するユビちゃんは、固定台詞だけを話すキャラクターではありません。システムは現在のゲーム状態、直近のチャットコメント、戦闘の進行状況、冒険中のイベントをもとに、LLMでリアルタイムにセリフを生成し、TTS音声で再生します。視聴者のコメントやスーパーチャット、ゲーム内の特殊状態に応じて、ユビちゃんはより配信者らしい形でその場に反応できます。

ここでの課題は、AIが単に会話できるだけでは不十分だという点です。AIは現在戦闘中なのか、パーティーが瀕死状態なのか、誰が直前にコメントしたのか、現在のミッション進行がどこまで進んでいるのかを理解する必要があります。また、単なる投票用の数字に対して、意味のない反応をしないことも重要です。

そのため、ゲーム状態をLLMが理解できるコンテキストとして整理し、AIの返答がライブ配信の現場により近づくようにしました。

AIキャラクターの魅力は、「文脈のある反応」から生まれます。きれいなセリフを一つ生成すること自体は難しくありません。難しいのは、そのキャラクターが本当にこのライブ配信の中で冒険しているように感じられ、遅延なくゲーム状況を伝え、視聴者と自然に会話しながら笑い合えるようにすることです。

ポイント4:長期記憶によって、毎回のライブ配信がゼロから始まらない

配信を始めるたびにAIが視聴者と初対面のように振る舞ってしまうと、真のバーチャルIPになることは難しくなります。そのため、『UbiQuest』では記憶サマリーとセーブ機能を導入し、重要な出来事、チャット内容、ミッション進行、冒険結果を整理して保存できるようにしました。次回ゲームを読み込んだとき、ユビちゃんは前回までの冒険の流れを引き継ぐことができます。

この仕組みにより、RPGは連載型のライブ配信にもより適したものになります。第1章では、村、草原、洞窟、ダンジョンを経てBoss戦へと進み、さらに渦の遺跡や混沌の侵食者へと展開していきます。毎回のライブ配信が、単発のインタラクティブデモではなく、ひとつの大きな冒険の一部になります。

ライブRPGのコンテンツは、一回ごとに切り離されたデモではありません。積み重ねていくことのできる共通の記憶です。AIがこれまでに起きたことを覚えていれば、視聴者も次回また戻ってくることを楽しみにしやすくなります。

「ゲームを見る」から「一緒に冒険する」へ

今回『UbiQuest』を開発して得た最大の収穫は、ライブゲームにおけるインタラクションの本質を改めて理解できたことです。

これまで私たちは、ライブ配信にはインタラクションがあると言ってきました。しかし多くの場合、そのインタラクションは「視聴者が話し、配信者が反応する」という段階にとどまっていました。AI + YouTubeライブRPGの可能性は、視聴者のコメントが実際にゲームルールの中に入り込み、キャラクター、戦闘、物語、記憶に影響を与えられる点にあります。

同時に、これは技術統合の挑戦でもあります。YouTubeチャットルームの読み取り、投票機能、RPGの状態管理、キャラクターの数値バランス、LLMによる会話、TTS音声、セーブデータ、記憶サマリーなど、すべてがライブ配信のテンポの中で安定して動作しなければなりません。一つひとつのシステムは単独で見れば珍しいものではありませんが、それらをつなぎ合わせて「遊べるライブ冒険」にすることこそが、本当に難しく、そして最も面白い部分でした。

『UbiQuest』は現在も進化を続ける実験的なプロジェクトですが、すでに明確な方向性を示しています。未来のインタラクティブコンテンツは、単に視聴者にAかBを選ばせるだけのものではなく、視聴者自身が物語の一部になっていくものかもしれません。

「物語を語る」ことから「冒険を共創する」ことへ。これこそが、AIライブゲームの最も魅力的な次の一歩なのかもしれません。

📍ライブ配信リンク


ユビタスについて

ユビタスは、NVIDIA から出資を受けた台湾初のテクノロジー企業であり、高度なGPU仮想化技術およびクラウドストリーミング技術において、世界的に高い評価を受けており、さまざまな産業分野に向けて、世界水準のクラウドおよび AI ソリューションを提供しています。

また、台湾大学(National Taiwan University)や東京大学(The University of Tokyo) などのトップ大学と連携し、繁体中国語および日本語に対応したローカライズ大規模言語モデル(LLM)の研究・開発を推進しています。

ユビタスは以下を含む多様なAIGC(AI生成コンテンツ)サービス を展開しています。

  • UbiArt:AI画像生成ソリューション
  • UbiONE:AIバーチャルキャラクターソリューション
  • UbiAnchor:AI搭載バーチャルニュースアンカー
  • Ubi-chan(AI VTuber)生成AI技術を体験する公式ブランドアンバサダー

さらに、クラウドゲーム分野のパイオニアとして、ゲームスタジオ向けにクラウド対応を実現するエンドツーエンドのソリューションを提供するとともに、通信事業者による独自クラウドゲーミングサービスの構築を支援しています。同技術は、インタラクティブコンテンツやVRを含むマルチメディア配信にも活用されています。

 

お問い合わせ先

TEL : +81-3-6435-3295 (東京)

+886-2-2717-6123 (台北)

メディアに関するお問い合わせ : pr@ubitus.ai

事業に関するお問い合わせ : contact@ubitus.ai

Webサイト: www.ubitus.ai